彩都とアヤメ

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優にぃは、たまにこうしてキスをしてくることがある。 俺はこれが普通として過ごしてきたし、おかしいとも思わない。 今回も触れるだけの優しいキス。 …の、はずだった。 やけに長いなと感じて、優にぃの背中を小さく叩くと、優にぃは優しく頭を撫でる。 それにほっとして力を抜くと、優にぃは俺をソファに押し倒した。 「え?」 優にぃを見上げると、黒い瞳は俺を真っ直ぐに射抜く。 それに吸い込まれるように見つめていると、再びキスをされる。 すると、突然ぬるりと舌が入ってきた。 「…んむっ!?」 舌が俺の口内を遊ぶように動く。 思わず引っ込めた俺の舌を見つけ、優にぃは自身の舌と絡める。 チョコが俺と優にぃの舌の熱で溶かされていく。 苦いビターなチョコの味。 それなのに。それなのに…、 __甘く感じてしまう。 「んっ…、ふ、ぁ…っ!」 聞いたこともない甘い声に、一瞬誰が出したのか分からなくなった。 しかし、優にぃが舌を絡める度に出る甘い声に、自分から発された声だと認識する。 カッと顔が熱くなって、恥ずかしくて堪らなくなる。 そんな俺を見た優にぃが、するりと滑るように俺の手に指を絡め、恋人繋ぎをする。 それが俺に「大丈夫」と言っているような気がして、その手を握り返した。 優にぃが驚いたように目を見開く。俺は、熱くなった頬をそのままに、潤んだ瞳を細めてにこりと微笑んだ。 優にぃの喉仏が上下する。そして、熱のこもった目で俺を見つめ、また深く濃厚なキスをした。 「んぁ、んん…っ」 感じたことのない快感が背中を駆け抜けて、脳が甘く痺れる。 何も考えられない程に頭がふわふわして、この快感に全てを委ねてしまいそうだ。 初めての感覚に戸惑っていると、優にぃの口が俺から離れていく。 俺は口に溜まったどちらのものか分からない唾液を、こくりと飲み込んだ。 そんな俺を見た優にぃは「偉いね」と微笑んで俺の頭を撫でた。 俺の脳は既に考えることを放棄していて、優にぃの手の平に頬を擦り寄せた。 ピシリと固まった優にぃを不思議に思い、優にぃを見上げた。 「どーしたの…?」 首を傾げると、「あ、いや…えと」と口ごもりながら、「俺はお兄ちゃん、俺はお兄ちゃん。我慢、我慢だ…」と呟いている。 意味が分からず、疑問を深くするが、どうやら優にぃは今辛いらしい。 俺はそれが悲しくて、優にぃの両頬を手で包む。 優にぃが不思議そうにこちらを見つめる。 俺は優にぃに近づいて、優にぃの唇にキスをした。 ちゅ、と音がすると同時に、優にぃが小さく「は…?」と呟いた。 「優にぃ、苦しいんでしょ?だから、おまじないのキスだよ!」
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