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「ほんっと…、勘弁してくれ…」
優にぃが片手で顔を覆う。手の隙間から赤い頬が見える。どうやら、照れているらしい。
いつも赤面するのは俺だけど、今回は優にぃを赤面させることができた。
俺は仰向けの体制から起き上がって、優にぃと向かい合うように座る。
「いつも俺ばっかり照れてるから…。今回は俺の勝ちっ!」
悪戯っぽく笑うと、優にぃは赤かった顔を更に赤くして「うぁ…」と唸って顔を伏せた。
俺は初めて見るその姿に驚きつつも、小さく笑う。
(母さんもだけど…、優にぃも可愛い所あるよな)
似たもの親子ということか。
未だ復活できずに赤面している優にぃを目に焼き付けるように観察していると、不意にインターホンが鳴った。
軽快に響く機械音。インターホンと繋がっている端末で確認すると、幼馴染がいた。優にぃは無理そうだと判断して、俺が対応しようとドアを開ける。
「やっほー!遊びに来たよ♪」
ウィンクしながら告げる幼馴染〈橘 裕翔(タチバナ ユウト)〉。髪がふわふわで、相変わらず犬みたいだ。
「ゆう、あのね…。せめて来る前に連絡ぐらいして?」
「ごめん!次こそはする!」
「どうせしない癖に、何言ってるんだか…」
「てへっ★」
何度このやり取りをしてきたか。それでも毎回許してしまう俺も俺だが。
裕翔…ゆうは、幼馴染でよく家に突然来ては遊んで帰る。
家は隣で、親同士のとても仲がとても良くて、自然と子供の俺たちも仲良くなった。
今では二日に一回は遊びに来る程だ。
「そんなに沢山遊びに来てよく飽きないね」
呆れながらため息をつく。
ゆうは意味がわからないとでもいうように首を傾げ、
「飽きるはずないよ!あやがいるだけでめっちゃ楽しいっ!」
と犬の耳と尻尾が見えるような満面の笑みを浮かべる。あ、犬種はポメラニアンね。
キラキラしたオーラが眩しくて目を細める。
こ、これが陽キャってやつなのか…!
俺とゆうは愛称で呼び合っている。…まあ、優にぃとは愛称じゃないけど。
相変わらずのわんこぶりに思わず苦笑しながらも、家の中に入るよう促す。
「お邪魔しまーす」と言ってゆうはリビングへ足を進める。俺も後を追うように向かうと、リビングのドアを開けた瞬間、ゆうは固まった。
俺は首を傾げた後、思い出して青ざめる。
「…お邪魔してます、優さん?」
「思ってもないことは言わなくていいぞ」
「いえいえ。そんなことないですよー」
「相変わらずの猫被り…いや、犬被りだな」
「あはは、何の事かさっぱり」
「そうか。いつまで続くか見ものだな」
「「…………」」
両者にこにことして一見仲が良いように見えるが、実は違う。
この二人、前世で何かあったのか疑わずにはいられないほど仲が悪いのだ。
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