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優にぃの通っている高校は全寮制で、今は春休みらしく、帰省している。
それまでは家に優にぃがいなかったから、俺とゆうの二人で過ごしていた。
たまにそのままの流れで泊まったり、二人でプチ旅行に行ったりして、楽しかった。
だからすっかり忘れていた。この二人は、《会わせるな!危険!!》のコンビだということを…。
「帰っていたんですね」
「まあな。我慢ができない駄犬から守らないといけないんでね」
「……掘られてしまえばいいのに」
「生憎、俺はバリタチなんだ。期待に応えられなくてすまない」
「いえいえ。そんなあなたでも、ネコになれるような良いお相手が見つかりますよ。ほら、チワワとかガチムチとか。俺のオススメはチワワですが」
「おい、やめろ!最近本当に迫られてて困ってるんだ!」
「お、いいじゃないですか。非処女になってみては?」
「冗談でもやめてくれ…」
頭を抱えて蹲る優にぃ。それを見てにやりと笑うゆう。
ゆうは世間一般では〔ふだんし〕と呼ばれる人らしい。二つ名ってかっこいいよね!
男と男の恋愛?が好きなんだって!よく分からないけど、ゆうが楽しそうだからいいや。
…それにしても何を話してるんだろう。二人とも毎回こうやって言い争っている。今回はゆうの勝ち?なのかな。
俺はこの二人を会わせたくない。それは、喧嘩してしまって収拾がつかなくなることが原因だ。…だけど、それだけではない。
くいっとゆうの袖を掴んで引っ張る。
「…ん?どーした?」
「…っ、お、俺にも構って」
凝視されてる気がして、目を逸らす。
…仕方ないじゃないか。二人は喧嘩するとそれに夢中になって、俺は放置される。
話している内容が分かるならまだいいけど、さっぱり分からないから、間に入ろうにも入れない。
……要するに、寂しいのだ。
甘やかされて育っているのは自覚している。その結果、とんでもなく寂しがりで甘えたがりな性格になっていることも。
だから俺は二人を会わせたくないのだ。
中々反応が返ってこないものだから、俺は羞恥で顔が赤くなっていく。
「………カワッッ!!」
「…んえ?」
「可愛い!可愛すぎるっ!」
そう言っていきなり抱きしめてくるゆう。同い年なはずなのに俺よりも身長が高くて、すっぽり収まってしまうのが悔しい。
「ごめんね、せっかく遊びに来たのに…。あんな奴放っておけばよかったね」
優しく頭を撫でられる。
「…あそぼ」
「うん、いいよ。何しよっか?」
そう言って穏やかに微笑むゆう。この時のゆうは、際限なく甘えさせてくれるから好きだ。
「えっと…、あ!じゃあ、さっきの会話の内容を教えてよ!」
「…ゑ?」
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