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「「…ッ!!」」
ゴクリと喉を鳴らした二人。優にぃがトイレへと直行した。
それを不思議に眺めていると、視界に影が映った。…と、言っても、今この場には俺とゆうしか居ないから、自然と相手が限られるけど。
見上げると、ゆうはいつものヘラヘラした雰囲気はなく、グッと何かを耐えているようだった。
ゆうがこちらへ歩みを止めないから、俺は後ろへと後退る。
トン、と壁に背中が当たる感触がして、横に移動しようとした瞬間、ゆうの腕が俺の両横へ伸びていて、俺を囲うように見下ろした。
「…っ、ゆう…?」
焦って、ゆうに訴えかけるも、相変わらずゆうは目を細めたまま。
ゆうの目にギラギラとしたものを感じて、目を逸らそうとする。
「ダメ、あや。こっち見て」
いつもより低い声が耳元で囁かれ、ビクリと肩が震える。
恐る恐る目を合わせると、ゆうは少し目尻を下げて苦笑した。
「あや、ごめんね。あやがそんなつもりじゃないってことは分かってるんだけど…」
「そんなつもりって……?」
俺が問いかけると、ゆうは小さく笑って「そうだよね、気にしないで」と頭を撫でた。
いつものゆうに戻りつつあることに安堵すると、ゆうが突然抱きしめてきた。
「…でも、あや。誰にでも簡単にあんな事言っちゃダメだよ?」
どうして、なんて言葉が出る前にゆうは俺の耳に口を寄せた。
「__次したら、今度こそ我慢できないから」
そう囁いたや否や、かぷりと俺の耳を甘く噛んだ。
「ひあっ!?」
油断していて、思わず声が出る。
ゆうは「ふっ、かーわい」なんて言って笑っているが、笑い事じゃない。真面目に。
「い、今、か…かか噛んで……っ!」
「んー?ちょっとした警告だよ♪」
いつも通りに戻ったのか、ゆうは気分良さげにソファに腰掛けた。
ここで認めては俺の中の何かが失われてしまいそうだったが、ゆうは掴みどころがないし、切り替えのスイッチ?がいつも分からないから、仕方ないと無理矢理納得した。
俺もその隣に座ろうとしたが、脇に手を差し込まれて持ち上げられた。そしてそのままゆうの膝の上に着地。
優にぃもゆうも、どうしてそんなに膝の上に俺を乗せたがるんだろ。
俺は、少し冷たくなったコーヒーを手に持ちながら、ゆうに高校へ行くことを伝えた。
「…へえ。あやが高校へ…ねぇ」
ひっ、何か怖いっす。言葉の端々に不機嫌さが滲み出てるよ。
小刻みに震えていると、扉が開く音がした。
目線を向けると、優にぃがトイレから帰ってきたらしく、俺とゆうの状態を見て、すぐに眉を顰めた。
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