彩都とアヤメ

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「う、うぅ…っ!」 感情がぐちゃぐちゃに混ざって、何とも言い難い。 恥ずかしいし、泣き疲れたし、二人はイケメンだしいぃ…っ! 「あやー? そろそろ出ておいでー?」 「………」 …てな訳で、今俺は部屋の中のベッドに潜っている。 そしてさっきからゆうの呼びかけにフル無視を決め込んでいる。 「…あや、入っていい?」 さすがに申し訳なく思い、俺は毛布を被ったまま部屋のドアの鍵を捻って、少しだけ開けた。 「……」 「あや?」 「…ここで話す……」 「…分かった」 ゆうは少ししゃがんで、俺と視線を合わせる。 真剣味を帯びたその顔がイケメンで、今の俺に追い討ちをかける。 「……」 「…あや?どうした?」 俺がむすっとしていると、ゆうがそれに気づいて声をかける。 「………いけめんなのがにくい」 ゆうはきょとんとした後、吹き出すように笑う。 「…何?」 「ああ、いや。ごめんごめん。あまりにも可愛くて」 「かわ…ッ!?お、俺は怒ってるんだよ!?」 「うんうん。ごめんね」 「むうぅ〜…っ!」 絶対反省してないだろコイツ!! 俺がゆうを睨みつけてると、突然何を思ったのか、こちらに手を伸ばしてくる。 「な、何……?」 ゆうの手が両頬に触れる。少し体温の高い手のひらが心地良い。 するといきなり、俺の頬を掴む。 「むっ?」 むにむにと揉まれ、つんつんとつつかれ、びよーんと伸ばされ…「ひや、にゃに!?(いや、何!?)」 「…うわ、すげぇ……。もちもちだ」 「むにゅう…?」 「ずっと気になってはいたけど、まさかこんなにだとは…」 「いう?(ゆう?)」 俺が首を傾げると、ゆうは頬を触るのを止めて、今度は手をにぎにぎしてくる。 本当にどうしたんだ。 「ゆう、どうしたの?」 「ん? あやはどこも餅みたいだなーって」 「…ふふっ、なにそれ」 おかしくて笑うと、ゆうはこちらを見つめた後、小さく微笑んだ。 「良かった、笑ってくれて」 「んぇ…?」 突然何を言い出すんだ、コイツは。 「さっきからずっと口角が下がってたからさ」 そう言って、ゆうは俺の口端を指でぐいっと上げる。 「__ほら、可愛い」 ゆうは砂糖でも撒き散らしてんのかと疑うほど甘い笑みを見せ、俺の頭を少し撫でる。 そして「お菓子の準備できたら呼ぶね」と言って満足そうに俺の部屋から出て行った。 ドアが閉まる音がやけに大きく聞こえて、俺は力が抜けたようにその場にずるずると座り込む。 ドクドクと心臓の音が耳に響く。 (……なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ…!?) あんなゆうは見たことがない。さっきからおかしい。 それに優にぃもなんだか変だ。 「くそ…」 手の甲を頬に当てると、思ったより熱く、つい声をもらす。 じんわりと滲むように引いていく熱が、俺の手の平を包むような感覚に、ただ身を委ねていた。 彩都side end
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