彩都と放送委員長

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「大丈夫です。“俺”がいるでしょう?」 そう言って自信満々に言い放つのは優にぃ。 敦さんは「君なら…」と納得したように頷く。 「ちょっと!“俺”じゃなくて“俺ら”でしょ!」 ゆうは割り込んで俺の手を握る。どことなしか眉間に皺が寄っているような…。 不服です!って感じを前面に出して抗議する姿を見て優にぃは鼻で笑う。 二人のこのやりとりはどこでもやるんだなと遠い目をしていると、敦さんと目が合う。 首を傾げると、敦さんはテーブルに黒いカードを置いた。 それを手に取ると、艶やかな黒色が光に反射してキラキラと輝く。 ただのカードに見えるけど…とハテナを浮かばせていると、横からスッと取られてしまう。 「理事長、こんな色のカードは見たことありませんが…!?」 どうやら優にぃはカードの正体を知っているけど、色に疑問があるらしい。滅多に見ないような驚愕の表情を浮かべ、カードを見ている。 敦さんはにこりと笑う。 「本来、黒色のカードは存在しないんだよ。でも急遽作ったんだ。だって、彩都くんは“生徒”ではないからね」 その言葉をすぐには理解できずにぽかんとする。もしかして、このカードは一般生徒ですらない人に渡されるものなのか…? そりゃそうだ…。突然学園にお邪魔します、じゃ納得いかないよな。うぅ…。 そう落ち込んでいると、敦さんが俺の表情に気付いて「あれ?」と声を漏らす。 「もしかしてお兄さんから何も聞いていないのかい?」 「…え?」 バッと横を見ると、優にぃがそっぽを向いている。「優にぃ…?」と呼び掛ければ、ゆっくりとこちらを向くが、依然として目が合わない。 どうやら何か説明していないことがあるらしい。 「なるほど、何となく状況は理解したよ。じゃあ、順を追って話すね」 そう言って、テーブルに置かれたコーヒーを手にとって一口。そしてまた微笑を浮かべる。 「まず、このカードについて。このカードは、この学園では指紋のようなものなんだ」 敦さん曰く、このカードは学園の生徒全員が持っていて、個人情報が全て載っているらしい。食堂の支払いもこれだし、寮部屋の鍵の役割もこれが担っているそうだ。 「でも、生徒によってその色は違って、一般生徒は白、特待生は赤、各委員長と生徒会役員や風紀委員はシルバー、生徒会長と風紀委員長はゴールドなんだよ」 確かに、支払いとかもカードでするなら特待生と一般生徒の違いは分けておかないといけない。 …ん、でも風紀委員会は他の委員会と比べて随分と優遇されているんだな。この学園では、相当重要な組織みたいだ。 敦さんが、俺の考えを見透かしたように微笑む。 「この学園は…うん、“色々と”特別だからね。それに、基本生徒が主体となって運営していくから、教師はあんまり関与しない方針なんだよ。だからこそ、規律を守るための風紀委員会は特別なんだ」 色々と、の部分をやけに強調して話す敦さん。どうやら個性が強いみたいだ。いいことじゃないか? でも触れたらいけない雰囲気がしたからスルーする。 「そうなんですか。風紀委員長はとても凄い方なんですね」 カリスマ性に溢れている人なんだな。どんな人なんだろう…。 まだ見たことのない風紀委員長のイメージ図を頭の中に思い浮かべ、ほんの少し楽しみになる。 「…だってさ、東雲くん?」 「……みたいですね」 敦さんがふふ、と楽し気に笑って優にぃに目線を向ける。どうやら、優にぃのことは苗字で呼ぶらしい。 その視線を真っ向に受けているのに、無表情に返す優にぃ。 本当、俺以外の前では別人みたいだよな。 それにしても、どうして優にぃに言うのだろう。聞いていたはずなのに。 あ、優にぃがこの学園に通っているからか。
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