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歌い終わると、またもやコメント欄がご乱心状態になった。
【いつ聞いても良いわあ…】
【それな。マジ好きすぐる】
【イケボだし、たまにカワボだし、なんかエロいし】
【「なんかエロい」は草w】
【確か雑談するんでしたよね?】
「ああ、そうだった。えっとね…、最近できてなかったから、質問コーナーしようと思って」
【えっ?マジで?やったー!】
【え、え、じゃあ何色が好きですか?】
【なんでそんなに声が良いの!?】
【好きな食べ物!】
「わ、わ。ちょっと落ち着いて…!え、えっと…。紫色が好きかな、落ち着いてて。声がいいのは…うーん…、無理して褒めなくていいんだよ? 好きな食べ物はプリン!」
【臨機応変なところ好こ】
【紫かあ!意外!】
【プリンて…!可愛いぃぃ!!】
【…はあ、相変わらずか…】
【マジ無自覚すぎて困る】
【散々俺らが褒めても、自覚するどころかお世辞としか思ってないんだから手遅れだろ】
【長文お疲れ まあ、確かにそれな】
「ん?ん? どーゆーこと?」
【なんでもー!】
それから何個かの質問に答え、楽しい時間を過ごした。
配信が終わり、パソコンを閉じる。
「ふう…」
息を吐き、部屋を出て一階に降りる。
リビングに行くと、兄の〈東雲優(シノノメ スグル)〉がいた。
「おかえり、彩都。今日も絶好調だったみたいだな」
「優にぃ!見てたの?」
「もちろん。マネージャーとして当たり前だろ?」
そういって穏やかに微笑む優にぃ。本当に、彼ほど〈優〉って名前が似合う人はいないんじゃないかと思う。
そして優にぃは俺のマネージャーをしてくれている。
もちろん自分からバラした訳じゃない。偶然優にぃが〈アヤメ〉のファンで、「〈アヤメ〉と俺の声が似ている」と指摘され、バレた。
声が同じって分かっても誤魔化せば大丈夫って思うだろ?だがな…、
『え?俺が彩都の声を聞き間違えるとでも?彩都独特のテンションが上がると声が可愛くなる所も、今日配信で歌ったやつみたいな感動系の歌では、無意識だけど僅かに吐息を含ませて涙を誘うように歌う所も、俺は知ってる』
『あはは…。で、でもそれは俺だけじゃなくない?』
『あ、ほら。彩都は焦ったり隠し事がある時は無理矢理でも笑って、瞬きを平均3回連続でするんだ。今もした』
なんて言われたら認めるしかないだろ?
……もう分かるだろう。
優にぃは、世間でブラコンと言われる類の人だ。
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