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「印? 何の?」
意味が分からずにゆうを見つめると、ゆうはにこりと笑って、すり、と俺の鎖骨辺りを親指でなぞった。
「ここら辺にね、あやは俺のものって証、つけるの」
「ふーん…?」
よく分からないが、どうやら友情を確かめ合うようなものらしい。
「それって、ずっと一緒ってこと?」
要約して伝えると、ゆうは満面の笑みで「そーゆーこと〜♪」と機嫌良さげに言った。
へぇ、世の中にはまだまだ俺の知らないことで溢れかえっているんだなぁ。
そう思いながら、ゆうに「いいよ。印、つけて?」と自分の鎖骨をトントンと指でつつく。
「少しチリってするかも」
「注射とどっちが痛い?」
「ん〜、分かんない!」
「あはは、何それ」
そうやり取りをしながら、ゆうは俺の肩に顔を埋めた。
鎖骨を指でなぞって、ぺろ、と少し舐める。
何してるんだろ、と気になるが、恐らくこれも印を付けるための準備?なのかな。
そう思ってされるがままにしていると、不意にチクリとした小さな痛みが鎖骨辺りに響く。
ゆうが顔を離して「できた…♪」と機嫌良さげに笑う。
見てみると、肌に赤いものができていた。
少し目立つこれが、ゆうの言う“印”なんだろう。
指で優しく触れて、えへへ、と嬉しくなって笑うと、ゆうはそこにキスをした。
何か特別なことをする訳じゃないんだな、と少し意外に思う。
(あ、それなら…!)
思いついたことを実行に移そうと、ゆうに近づく。
「何、どうしたの?」
急にきらきらと瞳を輝かせた俺を見て、ゆうが頭を撫でながら尋ねてくる。
「んー、ゆうにも印、つけるの」
「俺にも…?」
「うん!だってゆうが俺とずっと一緒にいてくれるなら、俺もゆうとずっと一緒にいる!…でしょ?」
そう言って笑うと、ゆうは心底嬉しそうに目を細めて、「じゃあお願いしようかな」とシャツをぐい、と引っ張って鎖骨が見えるようにしてくれた。
ゆうがさっきしたことを思い出す。
(確か…。指でなぞって、少し舐めて、印をつける。最後にキスする…だったよね)
ぎこちなくも指で優しくなぞると、ゆうはピク、と少し反応した。
舌を出して、ぺろ、と舐める。何の意味があるか分からないけど、きっと大切なことに違いない。
次は印をつけるけど…、どうすればいいのか分からない。
眉を下げると、ゆうは優しく「強めに吸うんだよ」と頭を撫でる。
「吸う……?」
意味が分からないけど、言われた通りに吸ってみる。
確認しても、それらしきものはついていない。
「もう少し強く吸ってみて」
ゆうが頭上からそう言ってくる。頷いて、もう少し強めにじゅ、と音が鳴るほど吸う。
見てみると、確かに付いた赤い印。
すぐにキスをして、最後の仕上げも終わらせる。
ゆうを見上げて、印も指差す。
「できた!お揃いだねっ!」
嬉しくて頬を緩めると、ゆうは俺の唇に優しくキスを落とした。
「そうだね、お揃いだ」
ふふ、と笑うゆうがやけに大人っぽく見えて、少し赤くなったのは秘密だ。
「…あ、優にぃにも付けないと」
仲間外れなんて可哀想だ。今度会った時に付けてあげないと。
そう思い呟くと、ゆうはにっこり笑顔で「優さんには付けなくてもいいんだよ」と言って、俺の口に指をとん、とつけた。
「俺とあやだけの秘密ね…?」
囁くように言われて、思わずこくこくと頷いてしまう。
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