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「優にぃ…?」
理解ができずにいると、俺の顔を見た優にぃが、いきなり顔を苦しげに歪めたかと思えば、俺の頭に手を当て、肩に押し付ける。
「…っ、はぁ…」
きつく抱きしめられる。優にぃは余裕が無いように息を吐き、俺の肩に顎を乗せる。
「優にぃ? どうしたの…?」
「彩都…、今までごめんな」
急に謝られ、何のことか分からず首を傾げると、優にぃは俺の肩を掴み、少し離す。
「俺…、彩都が可愛くて仕方なくてさ…。本当はもっと話したかったし、たくさん一緒に遊びたかった。けど、お前が俺の気持ちを知って、離れてほしくなかった。…だから今まで突き放してたんだ」
揺れる瞳が、真剣な声色が、まるで優にぃじゃないみたいに感じた。
「じゃあ…、優にぃは、俺のこと……嫌いじゃない?」
「嫌いなわけあるか!世界一好きだっつーの!」
勢いよく言われ、瞬きを繰り返す。
(こんな優にぃ…、初めてだ)
「…うん。俺ね、今まで優にぃに嫌われてると思ってたの」
「うぐっ…」
俯き、「本当にすまん…」と呟く優にぃがおかしくて、くすりと笑う。
「でもね、今分かったよ」
「…?」
「優にぃは俺のこと、大切に思ってくれてたんだね」
「!」
思えば今まで俺がいない所で、確かに助けてくれてたんだ。
俺がソファに寝落ちしてたら、いつの間にか布団が掛けられていたり、朝起きたら何故か毎回スマホの充電が満タンになってたり。
些細な事だけど、今までたくさん助けてくれてた。
「だからね、俺も、優にぃのことだーい好きっ!」
向かい合った状態で抱きつく。優にぃは目を見開いて、しばらく「あ…」とか「う…」とか言っていたけど、徐々に手を伸ばしてきて、抱きしめ返してくれた。
暖かくて、ぽかぽかする。
もっとこの温もりを感じていたくて、優にぃに頬擦りする。
「えへへ…、優にぃ、ぽかぽかしてる…」
気がついたら俺は、優にぃにもたれかかったまま、眠っていた。
彩都side end
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