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「ははは、わりぃわりぃ。ちゃんと先生に待っているように言うから、早く取りに行ってこいよ」
バスのステップを飛び降りると、ちょうど先生がバスに乗り込もうとしているところだった。
「こら、智樹。もう出発するぞ」
「先生、ごめん。大切なもの忘れてきちゃった。すぐに戻るから、お願い、待っていて」
後ろを向いて道路を走って渡りながら一気に先生にお願いをした。そして、前を向いたとき、僕の方に向かってくる大きなトラックが僕の視界を覆ってきていた。
キキィッという大きなブレーキ音が聞こえた気がした。そしてそのまま僕の意識は途切れた。
目覚めると、真っ白い天井が目に映った。
「智樹、気がついたの?」
すぐそばに目の周りを真っ赤にしたお母さんの顔があった。
「修学旅行は?」
「あんなことがあったんだから、中止になったわよ。それよりどこか痛くない? 大丈夫?」
「中止……」
僕のせいだ。もういけないんだ。僕が忘れ物をしたせいで、僕が道路に飛び出したせいで、みんなで楽しみにしていた修学旅行が中止になったんだ。
玄ちゃん、光也、政信、みんな、ごめん、ごめんごめんごめん、僕のせいでごめん。
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