修学旅行は思い出バスに乗って

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 自宅に戻った僕は押し入れを漁り、封筒を取り出した。あの日と比べても、描かれているピエロは少しも色褪せていなかった。 「お前も僕と同じで、あの日、修学旅行に行けなかったことが、色褪せずに心に深く残っているんだね」  同じ苦しみを背負った仲間みたいに感じたためか、僕はクリアファイルに描かれたピエロに話しかけた。 「さて、時間も限られているし、できることから始めていこう」  まず最初にやることは、招待状作りだ。もう四十年会えていないクラスメートたち。この街から引っ越してしまった家庭もあるだろう。招待状を作っても、渡せなければ何の意味もない。  そこで僕は、この街の議員をしている玄ちゃんのお父さんに協力を仰ぐことにした。玄ちゃんはすでに遠くにいってしまっているので、直接玄ちゃんのお父さんに連絡を取ってみた。幸いだったのは僕のことを覚えていてくれたこと。僕が癌によって余命宣告をされていること、あの日修学旅行に行けなかったことが心残りになっていることを伝えると、目頭を押さえながらしばらく考えたのち、協力を約束してくれた。これでクラスメートに招待状を送ることが可能になり、僕は最大限の感謝を伝えて玄ちゃんの家をあとにした。  この歳になってもパソコンは苦手なので一枚一枚手書きで招待状を作成していく。ただの招待状ではなく、乗車券も兼ねたようなものにしようと、ちょっと凝ったデザインにしてしまったことから、思ったよりも時間が掛かってしまった。 「こののデザインは我ながらうまく描けたな。これならみんな来てくれるんじゃないかな。乗車券は必須だったはずだしな」  僕は手の上にのせた、自作の思い出バスの乗車券を眺めながら、自然と微笑んでいることに気がついた。 「さて、もうひと頑張りするか」  僕は画材を買うために、玄関に向かった。  
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