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光也が大きな声を出した。そうだった、あの日、僕が置き忘れてきた封筒のことを覚えていてくれたのも光也だった。今日は絶対に忘れないように何十回も忘れ物点検したんだ。あの日と同じ過ちは絶対にごめんだったから。
「貸せよ。俺たちが配ってやるから」
「ああ、政信ありがとう」
後ろの席の人にまわすように、僕の作ったしおりがみんなの手に渡っていく。
「うわ、似顔絵めちゃくちゃ似てる」
「そうそうこの寺で座禅体験とか組まれていたよね」
「政信の紹介にまいっちんぐって書いてあるぜ。お前このアニメ見るために野球とか試合途中でも帰っちゃったもんな」
「バ、バカ、女子も聞いているんだから大きな声で言うな」
「あれ、この最後の方のページだけ新しくないか?」
その一言でクラス中が後半に足し加えたページを開きだした。
お寺で座禅体験。足のしびれた光也が立ち上がろうとしてよろけて転び、そこに偶然あった木魚に頭があたりポクンッとかわいらしい音が鳴ったシーン。
神社の手水舎の水をのどが渇いていた政信が、飲み水と勘違いしてがぶ飲みしているシーン。
バスの中で、玄ちゃんがワンマンショーのように上手でもない歌を歌いまくっているシーン。
みんなで苦労しながら協力して作ったカレーライスを食べているシーン。
夜にみんなで枕投げをして、先生に怒られているシ-ン。
そして最後のページには、みんなが思い思いのポーズを決めている集合写真のシーン。
「これって」
光也と政信が同時に言葉を発した。
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