Tell phone

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プルルルル ピッ 「あ、もしもし?」 「もしもし、みっくん。・・・・・・大丈夫?」 「ごめんごめん、ばあちゃんの葬式、今日終わったよ。風邪声みたいだけど、大丈夫?」 「少し風邪を引いただけだよ。それより、数日間大変だったね」 大好きだった祖母の葬式の帰り、コンビニの駐車場で彼女に電話をかけた。 祖母が亡くなる前日の夜、僕は彼女に電話をかけて祖母の状態が良くないことを話した。 病院の救急処置室で、意識が朦朧とする中祖母は僕の名前を呼んでくれた。きっとこれが最後の対面になると思い、病院から帰った後も涙が止まらなくて、どうしようもなくなって彼女に電話をかけた。優しい彼女は真夜中まで僕と一緒に泣いてくれたのだ。 「君がいなかったら、心の準備もできずに僕は悲しいままばあちゃんと別れていたよ。今は落ち着いて、親戚たちと思い出話もできて元気だよ。本当にありがとう」 「元気なら良かったよ。心配していたんだ。ちゃんとご飯食べられてるかな、ちゃんと眠れてるかなって」 「僕は大丈夫だけど、じいちゃんがね。ずっと家で介護をしていたから、ばあちゃんがいなくなって落ち込んでいるよ」 「そうだよね、みっくん、おじいちゃんのこと支えてね」 「うん、これからもちょくちょく会いに行くよ。でも、後悔してるんだ。もっとばあちゃんに会いに行けば良かったって。何もしてあげられなかったなぁ」 「何言ってるの、みっくんみたいな最高な孫を持てて幸せに決まってるじゃない」 「そうかなぁ」 「そうそう、後悔することなんて一つもないんだから。充分よくやったよ。明日から仕事なの?」 「うん、休んだ分働かなくちゃね。あーあ、ばあちゃんのこと、全部終わっちゃった・・・・・・」 「疲れたよね。でも声が元気そうで安心したよ」 「またしばらくしたら落ち込んじゃうかもしれないけどね」 それから僕は久しぶりに従兄弟や慕っているおじさんに会えたことも話した。彼女のことを話したら、早くお嫁にもらえと言われたことを笑って本人に伝えた。 「君のことを親戚中に自慢したよ」 「そんなに良い彼女かぁ」 「みんなに紹介するからね。うちの親戚、みんな良い人だからすぐ仲良くなれるよ」 「そうだね、なんだか安心しちゃった」 長々と話しているうちに太陽が沈んで辺りが薄暗くなった。そろそろ彼女との通話を終えて家へ帰らなくちゃいけない。 「話を聞いてくれてありがとう。嬉しかったよ」 「ううん、私も声聞けて嬉しかった」 「じゃあ、またあとで連絡するね」 「あっ、待ってみっくん」 通話を終えようとすると、彼女は慌てて僕を呼んだ。 「どうしたの?」 「さっきも言ったけど、ばあちゃんのことで後悔することなんて一つもないんだからね。仕事終わりで疲れても会いに来てくれたし、外に出られないばあちゃんにたくさん楽しい話をしてくれたよ。みっくんは大事な大事なばあちゃんの孫だよ。ありがとう」 少し違和感を覚えつつも、きっと彼女は僕を励ますためにそう言ってくれたのだと思い「ありがとう」と感謝をしてから電話を切った。 寝る前、電話をしてくれた礼のメッセージを彼女に送った。 しかし、彼女は「なんのこと?」とメッセージを返してきた。祖母が亡くなる前日に電話をしたきりで、今日はしていないと言うのだ。 おかしいと思い、通話履歴を確認するとなぜか彼女との履歴が残っていなかった。 では、一体僕は誰と話をしていたのだろう。 風邪声に聞こえた、掠れてやっと絞り出したような優しい声は、誰のものだったのだろう。 もしかして、いや、でも・・・・・・。 大丈夫だと言ってしまったが、やっぱり僕はまだ大丈夫じゃないみたいだ。 通話の相手が大好きで、もう二度と会えない人だったのだと思うと、頑張ってせき止めたはずの涙が溢れて仕方がなかった。
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