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金のばらまき
日本経済は低迷していた。
無為無策を攻撃される政府。
臨時閣議。
総理は強く推した。
「経済復興金を配るのです。一億三千万人いる国民一人あたりに、一万円ずつ。それがテコ入れとなり、必ずや景気は上向くでしょう」
むろん反対意見もあったが、他の良案も出ず、結局総理の提案が通った。
後日国民に〈一人あたり一万円、経済復興金が支給されます〉との公布がなされた。
✕月✕日。
経済復興金の支払日。
「なんだ」
「一円足りない」
「9999円しかないぞ」
誰にも彼にも一万円に一円足りない、9999円しか支給されていなかった。
しかし、一万円と大差ない。ほとんどの国民はあまり気にせず、騒ぎを起こさなかった。
一部、一円足りないことに不満をみせ、国会に押しかける勢力もあったが、そんな少数派はいつの世にもいる。
そして、しょせん一円の問題。
抗議行動にもあまり熱が入らず、うやむやのうちにその者たちもこだわりをみせることをやめてしまった。
首相官邸。
総理大臣はにやにやしていた。
「思ったとおり。作戦勝ち。
うしししし。一億三千万円儲かったぞ」
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