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「創平君、久しぶり」
「あ、あぁ。久しぶり」
それは、夏休みぶりとなる再会だった。
「宿題は全部やったの?」
「……まぁ、イイジャナイカ」
「また……」
創平は毎年、こうだ。梨花も頭を抱えたくなるだろう。
「頭は良いんだから…」
「それ、皮肉か?」
梨花は全ての教科で学年10位には入る秀才である。一方創平は…割愛しておこう。話すのも嫌になる。
「なぁ、今日の昼から空いているか?」
「うん。創平の家に行けば良いの?」
「ああ」
「分かった」
梨花と創平は、中学2年生半ばのときからカップルだ。嗚呼、本当、恨めしい。
「何をするの?」
「今日でちょうど2年目だろ?」
「あっ、そっか。もう2年間も創平と恋人なんだね……。なんか感慨深いや」
「早いよな」
「うん。それに…楽しかった。ただ釣りに行くだけでも、すごく楽しく思えたし」
「1時間以上掛けたのに合わせて鮎3匹だけだったよな…」
「あれは…なんでだったんだろうね?」
計画を実行できるときは、一瞬しかない。梨花が創平と別れ、家に着くまでの、1人の時だ。“私の娘”と、再会しようではないか。
「それじゃ、すぐ来いよ」
「分かった。すぐ行くよ」
「「あははははは…」」
どちらからともなく笑いあう。嗚呼恨めしい。私を狂わせたあいつらが。私も、梨花と他愛ないやり取りがしたかった。
「梨花」
「っ…!」
梨花が急に走り出した。でも、すぐ追いつけた。
「久しぶりだというのに。ねぇ、酷いじゃないか、梨花」
「や、やめて!」
煩いので眠らせる。では、誰にも見られないうちにスーツケースに入れる。あとは、関西国際空港からアメリカに行くだけだ。大丈夫、今日の担当は買収しているやつらだ。
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