6人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?」
魔王には聞き覚えのある台詞だった。
その直後、魔王の首に剣が突き刺さった。その剣を握っている者の顔には見覚えなどまったくなかったが、その者が……。
勇者か……。
と魔王にはわかった。
話が違う……。
この時代は平和ボケしてて、勇者の質も低いと小鬼めが……。
魔王の意識はそこでぶっつりと途絶えた。
「魔王様。24度目の復活は前回よりも15分長く生きておられました」
死して横たわる魔王の体を小鬼は抱え上げ、再びベッドに寝かせた。
ベッドは復活の魔法陣の中心に置かれていた。
小鬼は先ほどの魔王の復活で一部分が消えてしまった魔法陣を描き直した。
「これでいい」
小鬼は自分の手際の良さを自画自賛した。
勇者は小鬼の肩をポンと叩き、聞いた。
「魔王は次、何年後に復活してくる?」
逆に小鬼が勇者に聞き返した。
「そんなことは勇者である君自身がよくわかっているだろう?」
その問いに勇者は苦笑の表情を浮かべた。
「俺が転生した時代が魔王の目覚めるときだ」
小鬼は奇妙なものを見る目をして言った。
「そうとも。勇者が転生してこの世に現れたら魔王も復活する。勇者である君は、その記憶を持ったまま転生――生まれ変わり、即断即決で、自分を勇者のレベルへと鍛え上げ、魔王の復活からの完全な目覚めに間に合うように――、ここ魔王の寝室に最短最速でやってくるワケだ」
「魔王7度目の復活のときに、魔王軍は徹底的に壊滅させたからさ、それ以降は手強い敵を倒していくという面倒くさい中間作業もなしで、復活から目覚めたばかりの魔王をさくっとできちゃうようになったワケよ」
勇者は血のりの付いた剣を二度振るい、鞘に戻した。
「さてと。今回もうまくいったし、毎度のように、残りの人生は勇者の能力で好き勝手に楽しむぞ!」
勇者はあっという間に魔王を倒し、魔王城から去っていった。
残された小鬼はベッドに横たわる魔王の死体を見て言った。
「私がもし――、復活から目覚めた魔王様に<久しぶり>と真っ先に声をかけたら、魔王様は同じ人間が勇者に転生しているという事実に気づくでしょうね」
小鬼は魔王の死体に真っ赤なシーツを被せた。
「あの勇者は、転生体に選ばれた魂が1度だけもらえる転生のオマケのご褒美に神からどんな力が欲しいかと問われたとき、死んだら次も勇者に転生できる力が欲しいと願った。魔王も死んで復活せずに転生を狙ったらどうか。そしたら、こんなバカな勇者転生にいつまでも付き合うこともないのだろうに」
小鬼は――、
「まあ今回も勇者はうまくやった。さて、25度目の魔王復活となる次回までに、ここ魔王城の内部を改装してやろう。それで、あの勇者が迷子になって慌てる顔を見てやろうかなっと。その時、私が勇者に<久しぶり>と言ってやるのもいい」
神様はほくそ笑んだ。
<終わり>
最初のコメントを投稿しよう!