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「あ、お母さんに連絡しなきゃ」
スマホに視線を移すと、昨晩張り切って塗ったピンクベージュのネイルがキラリと光った。
ふと視界に入った姿見には、髪をアップスタイルにしてブルーグレーのワンピースにネックレスをつけた私が映っている。
せっかくおしゃれしたのに……よし、実家に行く前に、駅前のショッピングモールに寄ってみよう。
本当ならブライダルフェアの後に、彼と一緒に私の実家で晩ご飯を食べる予定だった。
母にメッセージを送る。
『今日のブライダルフェア、寛人の仕事の都合で行けなくなった』
数分後、母から返信。
『そう、残念ね。こっちにはくるの?』
『予定より早くなると思うけど、とりあえず私だけ行く』
『了解! 何時でもいいよ!』
最後にポンッと、タヌキが『OK!』と話しているスタンプが送られてきた。
見たことのないスタンプ。母が自分で購入したのだろうか? と想像するとなんだかほほ笑ましくて、ふふっと声が漏れた。
現在、11時前。
ブライダルフェアは13時からだったなぁ。
……あ。
「結婚式場に電話しなきゃ!!」
キャンセルの電話なんてしづらいよぉ。
はあっと大きなため息をついて、私は電話をかけるためにスマホに表示された番号をタップした。
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