1. ドタキャン

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「あ、お母さんに連絡しなきゃ」    スマホに視線を移すと、昨晩張り切って塗ったピンクベージュのネイルがキラリと光った。  ふと視界に入った姿見には、髪をアップスタイルにしてブルーグレーのワンピースにネックレスをつけた私が映っている。  せっかくおしゃれしたのに……よし、実家に行く前に、駅前のショッピングモールに寄ってみよう。  本当ならブライダルフェアの後に、彼と一緒に私の実家で晩ご飯を食べる予定だった。  母にメッセージを送る。 『今日のブライダルフェア、寛人の仕事の都合で行けなくなった』  数分後、母から返信。 『そう、残念ね。こっちにはくるの?』 『予定より早くなると思うけど、とりあえず私だけ行く』 『了解! 何時でもいいよ!』  最後にポンッと、タヌキが『OK!』と話しているスタンプが送られてきた。  見たことのないスタンプ。母が自分で購入したのだろうか? と想像するとなんだかほほ笑ましくて、ふふっと声が漏れた。  現在、11時前。  ブライダルフェアは13時からだったなぁ。  ……あ。 「結婚式場に電話しなきゃ!!」  キャンセルの電話なんてしづらいよぉ。  はあっと大きなため息をついて、私は電話をかけるためにスマホに表示された番号をタップした。
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