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数分前までウキウキとデートの準備に勤しんでいた私、藍原梨花は、彼、西園寛人との通話を終えて、天を仰いだ。
今日のデートは特別。だって、前もって予約しておいた人気の結婚式場でのブライダルフェアに行く予定だったのだから。
事務職の私とは違い、システムエンジニアの彼は土日が仕事のこともある。だから彼の都合をきいて、「この日なら……」というから今日にしたのだ。
な、の、に!
彼からの電話。
「緊急で出社しないといけなくなった」
「え? 緊急!? そ、そうなんだ。仕方がない、よね……うん、分かった。気をつけて行ってきてね」
なんて、私は仕事に理解のある彼女っぽい受け答えをしたのだけど、本音は『デートのドタキャン、3回目だぞ~!』と心の中で叫んでいた。
28歳の女が電話口でわがままを言ったところで彼を困らせるだけだし、結婚前に『面倒くさい女』なんて思われたくないし、なにより仕事だし、どうしようもないのは重々分かっている。でも、ドタキャン続きはひどくない?
……寛人と行きたかったなぁ。ブライダルフェア。
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