2. ひとりぼっち

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 実家までは電車で1時間。  車両の振動に身を任せて、彼との出会いに思いをはせる。  寛人とは2年前、小学校の同窓会で再会した。  両親を早くに亡くして親戚の家に引っ越した彼とは高校から疎遠になっていたけど、今住んでいる場所と働いている場所が近くて、すぐに意気投合した。  そして今は婚約者という関係。  だけど最近は彼の仕事が特に忙しくて、直接顔を見て話したのはいつだったかなと考えてしまうくらい、会えていない。  電話やメッセージのやり取りはしている。けど、こんな状態のまま結婚していいのかな、と一瞬頭をよぎることもある。  そんなときに、連続でドタキャン。  私が提案して行くことになったブライダルフェア、本当は行きたくなかったんじゃないか?  私の実家に行くことも、本音は面倒に思ってたんじゃないか?  寛人は優しいから、黙ってるだけで本当は……。  なんだか寛人の気持ちが分からないよ。  会えてないから? 一緒に住んでたら違うのかな……? 『実家には私だけで行くね。仕事がんばって』  彼にメッセージを送った。  ……虚しいなぁ。  私の心の内を表すように、駅を過ぎるごとに車両の窓から見える空が雲に覆われた。  電車が川を渡ると、高層ビル群のかわりに緑地が広がる。  私は降りる駅につくまでずっと、車窓からのどかな風景を眺めていた。
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