母の肖像

1/1
前へ
/15ページ
次へ

母の肖像

俺はガキの頃から、女が嫌いだった。 ガキにとって母親ってのはこの世の全てだけど、俺の母親は男である息子だけを猫可愛がりする女だったから、姉と妹は俺を嫌っていた。 母親に特別扱いして欲しいなんて頼んでもいないのに、姉に虐められるのは割に合わない、と子供心に感じていた。 小中学校でも高校でも大学でも、好きな女は居なかった。 幼なじみ相手に初体験を済ませたのだって、ただの興味本位だったし、自分から求める女なんて唯の一人もいなかった。 好きでもない女にベタベタ触られると、いつまでも俺に執着する母親の手を思い出して、とてつもなく不快になる。 だから俺の経験人数なんてのは、同世代の男の平均よりも少ないぐらいだったろう。 俺は女が嫌いなのに、女共は何故か俺が好きらしい。 意味がわからなかった。 少しも好きじゃない食い物を口に押し付けられてるみたいで、うんざりしていた。 かと言って、人口の半分以上を占める連中を邪険にし過ぎても損になる。 俺にとって成長するという事は、女共と適当な距離を保てる様になる、という事だった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加