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居候
「おかえりなさい」
「……ああ」
赤の他人同士でも、おかえりなさい、ただいまってのは言うべきなんだろうか。
この女は、俺の嫁じゃないんだが。
仲のいい後輩──少なくともこっちはそう思ってる──を伴い、俺はさっきまで逗子の海にいた。
アイツと砂浜に座ったせいで、あちこちが砂だらけだ。
これじゃ家主の先生がいくら寛大でも、明日の昼間に来てくれる、家政婦さんに悪いよな。
玄関に突っ立ってそう考え込んでいると、彼女は訝しげに居候を見た。
「どうしたんです?」
「いや。服ここで脱いじゃうわ。砂だらけなんだよ。家ん中が砂まみれになるから。そのまま風呂行く」
「あ。じゃあ私も入ります」
何でそうなる……。
えらく綺麗な顔をしてるのに、本当に調子の狂う女だ。
「シャワーしてくるだけだから、いいよ。あんたは仕事してろって」
「はい……」
なんで、こうなったんだかな……。
溜息を堪えて頭を撫でてやると、俺より歳上のくせに、先生はニコニコと嬉しそうに笑う。
……本当に、変わった女だ。
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