◆プロローグ

2/2
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「いや、えっと……ええっと……」  久我先生から言われた通り必死に思い出そうとするけれど、全然思い出せない。頭をいくら捻っても五十嵐先生に何を言ってしまったのか思い出せない。  いくら考えても一緒なので「記憶にないです」と正直に告げる。すると、久我先生は眉間に皺を寄せ不満気な表情をした。 「オーベンだから、好きになった?」 「な、なに言って――」  久我先生の問いに否定はできなかった。私は五十嵐先生を尊敬している。少なからず、私の中には愛も芽生えていると思う。けれど、私の心の中に踏み込んでほしくなくて、形だけでも「そんわけない」と、否定しようとした瞬間、久我先生の唇が私の唇に重なった。軽く触れるとすぐに唇を離した久我先生。  今何が起こっているのか理解できなかった。 「――はぁ、どうだかな。俺の愚痴を言ったことが記憶にないんなら、五十嵐に言い寄られててもおかしくないよな?」 「い、言い寄られてなんか……」 「やっぱり五十嵐を好きなんだ?」 「だから、違……」  話を聞いてくれない。  久我先生が私に与える囚われているような、しつこいキスはこの晩止むことはなかった――。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!