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「簡単に説明するとね」
「簡単に説明できるのか」
「急に知らない場所に呼び出されたと思ったら勇者に封印されたの」
「うん、やっぱり詳しくお願い」
予想通りに予想外の説明だった。そもそも簡単に説明できるようなことなんて世の中にそうないのだ。
じゃあイチから説明するね、と麻央は経緯を語り始める。
「まず一年前、私は交通事故に遭ったの」
うん、と僕は頷いた。
電話越しなので彼女には伝わらないだろうが、思わずそうしてしまうほど僕はそれを憶えている。
一年前、駅前の交差点で横断歩道を渡っていた麻央はトラックに撥ねられた。原因は運転手の信号無視。太陽光に目が眩んで見逃したらしい。
けれどその運転手は裁かれなかった。それどころか逮捕すらされていない。
轢かれたはずの女子高生が跡形もなく消え去っていたからだ。
「完全に轢かれたと思ったんだよね」
「うん。ニュースでも言ってた」
事故現場が駅前だったこともあり目撃者は多く、皆が口を揃えて「女の子が轢かれた」と証言していた。
けれど誰一人として、その後の彼女は発見できなかったらしい。
「近くに落ちてたカバンの中身で麻央だってわかったんだっけ」
「乙女のカバン探るなんてサイテー」
「言ってる場合か」
「それでね、気付いたら目の前に傷だらけの男が立ってて、私の胸に剣を突き立てたの」
彼女の言葉に理解が及ぶまで数秒かかった。いやまだ理解はできてない。
なんだその超展開。
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