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「麻央は出たくないのか?」
「じゃなくて出られないんだって。出られないのに出たい、なんて子供みたいなこと言わないよ」
答えになってない。彼女自身はどうなんだ。
寂しくないのか。口から出そうになった言葉を飲み込む。
そんなわけない。それなら電話なんかかけてくるわけないんだ。
じゃあ世界の平和のためにその感情を封印してるのか。
「優しすぎない?」
「近所でも優しいと評判の魔王なので」
「歯医者の口コミと一緒だな」
「まあ実際そんなしんどいわけじゃないしねえ。出られない以外は魔王って何でもできるし。どこの世界でもみんな何かしら我慢しながら生きてるでしょ? 全然マシなほうだよ」
そう言われれば、確かに結構いい生活をしてるほうだと思う。
学校も行かなくていいし、欲しいものは自分で作れる。魔王なら風邪も引かなさそうだ。
むしろ封印を破るほうが彼女にとっては不幸なんだろうか。
魔王が外に出れば勇者たちは放っておかないだろう。平和な世界を踏みにじっている罪悪感も彼女を傷つけるかもしれない。
それらと多少の寂しさとを天秤にかけたとき、一体どちらに傾くのか。
「……いや、どうでもいいかそんなの」
「ん?」
そうだった。そもそも考えるだけ無駄だった。
彼女の気持ちなんてわかるはずがないし、わかったとしても関係ない。
「さてじゃあどうやったら封印ぶち壊せるか考えよう」
「話きいてた? ここからは出られないし、出ていく気もないんだって」
「うん。言ってたな」
「それならなんで」
「話きいてた? どうでもいいって言っただろ」
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