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信号が変わる。車の走行音が消えた。
立ち止まっていた人々の固まりが動き始めて僕を追い越していく。そのまま黒いコンクリートに描かれた白線を踏みつけた。彼らの頭上には濃厚な青空が広がっている。
全部どうでもいい。
青でも赤でも白でも黒でも平和でも破滅でも。
あの日から、この世界に色なんて無くなった。
「僕が会いたいんだ」
どれだけ探したと思ってる。
君が消えたなんて信じられなくて、何度もこの場所に訪れては日に日に増えていく花束を横目に君を血眼で探していた。
どれだけ祈ったと思ってる。
君が消えたことを受け入れてからも、何度もこの場所に訪れては日に日に減っていく花束を横目に君に祈りを捧げていた。
たとえここじゃない場所でも、君が幸せならそれでいい。そう思おうとしてたのに。
見ないフリをした僕の幸せを今更チラつかせた君にも責任があるんじゃないか?
「僕が会いたいから魔王を解放するんだよ」
どれだけ嬉しかったと思ってる。
電話の相手に僕を選んでくれて。
憶えてたんだって喜んでくれて。
「だからさっきのダサいセリフは訂正する」
忘れるわけないだろ。彼女なんだから。
いつだって君は、僕の一番会いたい人なんだから。
「僕は僕のためなら世界中を敵に回しても構わない」
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