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ネム
けれども驚いている暇はない。
いきなりカラフルなメッシュの入ったネムが笑みを浮かべ誘ってきた。
「さっそくだが咲耶。これから『L−ワン』に出るんでネタの打ち合わせをするぞ」
勝手に、どんどん話しを進めていく。
「え、『L−ワン』って……?」
なんなんだ。それは。
「その年、倭の国で一番面白い女芸人を決定するイベントだ。プロアマオープン参加の女芸人による『レディース−ワン グランプリ』。略して『L-ワン』さァ」
ネムは笑って教えてくれた。
「えッ、一番面白い女芸人を決定するって。それって、『ザ・W』なんじゃないの?」
そっくりの企画だ。
それよりも私たちって女芸人なのだろうか。
「いいや、『ザ・W』とはまったく異次元の女芸人界最大のイベントだ」
「えッ、なに。異次元のイベントって?」
「なんと優勝賞金は一千万だ。スゴいだろう。フッフフ」
ネムは嬉しそうに微笑んだ。
「はァ……」
確か、『ザ・W』も優勝賞金は一千万だったはずだ。どこが違うのか、よくわからない。
「もちろん私が七百万でシャオランは三百万だ」
「えッ、もちろんって、じゃァ私の分は?」
ネムとシャオランの二人で一千万になるじゃないか。私の分はないのだろうか。
「あ、そうか。忘れていた」
「そうッ、じゃァ私はいくらなの?」
少しホッとした。いくらくれるのか。
「リーリーにも五十万くらい出さないとな」
「え、リーリー?」
パンダのリーリーにも五十万か。
「良かったわね。リーリー。これで美味しい笹が食べ放題よ」
シャオランは喜んでパンダのリーリーを抱え上げた。ヤケにパンダも嬉しそうだ。
「ちょっと待ってよ。私は。私の分け前は、どうするのよォ?」
しつこいくらいネムに訊ねた。
しかし彼女は話題を逸らし答えをはぐらかした。
「それから、大事なユニット名は『チューし隊』だ」
「えェッ、チューしたい?」何それ。
変なユニット名だ。
「そうだ。『L−ワン』の一回戦は、二時間後だからな。みんな用意はいいか?」
みんなと言っても私とシャオランだけだ。
「いやいや、用意なんか良くないよ。何一つセリフだって覚えてないし……」
むちゃぶりだ。それに私の分け前はどうなったんだろうか。有耶無耶にしやがって。
「大丈夫。セリフは、だいたいアドリブだから」
「え、アドリブって、いったい何をするの。漫才、それとも……?」
「ううん、コントよ。私は、もちろん美人キャビンアテンダントの役ね」
「もちろん美人キャビンアテンダント…?」
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