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ビキニの機長👙
「もちろん美人キャビンアテンダント…?」
なんともネムは自信過剰な少女だ。まァ、見た感じでは美少女には違いないだろう。
「そォッ、それでェ咲耶はパイロットの役ね。イケメン機長よ」
「ううゥッ、私がイケメン機長の役をするの?」
なんだ。それは。
「そうよ。ッで、私はそのイケメン機長の愛人の美人キャビンアテンダントなの」
「愛人の美人CA……?」
どんな設定のコントなんだ。
「機長は奥さんとは別居中なんだけど、いろいろあって別れられないの。離婚調停で争ってる最中に、愛人の私が割って入っていくって言う胸にグッとくるような感動的なコメディなのね」
「どこがの胸にグッとくるのよ。ドロドロの愛憎劇じゃん」
「そう、まさに血で血を洗うハートウォーミングなラブコメね」
「だからどこがハートウォーミングなんだって。血で血を洗って、どこが心があたたまるんだよ?」
「フフゥン、あんまり細かい設定は気にしないで」
「気にするだろう。基本設定じゃん」
「ハイ、これが咲耶が着るイケメン機長の衣裳よ。サイズ合うかしら?」
ネムは私に衣裳をつまむようにして手渡してきた。
「えェッ、なによ。これってビキニの水着👙じゃァ」
衣裳を受け取ったものの目を疑った。
ヤケに派手で面積の小さいセパレート型の水着👙だ。
まさか、こんな恥ずかしい水着👙を着て私にコントを演れと言うのだろうか。
「そうよ。私たちは忍ばない忍者だから。目立ってナンボでしょ」
「いやいや、目立ってナンボって言われても。こんな際どい水着でしかもビキニなんて、どんな機長なんだよ!」
「安心して。もちろんド変態の機長よ!」
「な、ド変態の機長って、何それ。どこが安心できるんだよ?」
どんなコントだ。
「操縦桿を握ってフライトするごとに毎回、趣味でビキニになるお茶目な機長なんだよ」
「どこがお茶目な機長なんだ。どんな趣味よ。コックピットでフライトごとにビキニになるって?」
「ほらァド変態だから。咲耶にピッタリの役でしょ!」
ネムは笑顔でとんでもない事を言い出した。どうしても私にビキニの水着を着せる気のようだ。
「はァ、どこがピッタリなんだよ。どんなキャラ設定よ。操縦桿を握るとビキニになる機長ってェ?」
「ッで、シャオランはハイジャック犯ね」
ネムは私の質問を無視し、続けてシャオランの役について説明をした。
「え、マジで?」
シャオランも眉をひそめた。
「そうよ。機長と美人CAの私が操縦室でイチャイチャしてるから、ハイジャック犯のシャオランが自動小銃を持ってコックピットへ乗り込んで来るのよ」
「なにィ、自動小銃を持って?」
そんな物騒なものを航空機の中へ持ち込めるのだろうか。
「ああァゴメン。ちょっとモデルガンの自動小銃が用意できなかったから、本物で我慢してね」
またネムはとんでもない事を言い出し本物の自動小銃を持ってきた。
「え、本物の自動小銃を使うの?」
手渡されたシャオランも目を丸くしていた。
「なッ、ちょっと待てよ。こらァ〜。コントで本物の自動小銃を持ち込む気なのか。どんな危ないコントだよォ。だいたいどこから持ってきたんだよ。自動小銃なんて?」
私は信じられない。
「大丈夫よ。ほらァ自衛隊で使うヤツだから。ちょっとの間、黙って拝借して来たのよ。ここだけの話しだけど」
「いやいや全然、大丈夫じゃないだろう。黙って拝借して来たって。ここだけの話しって事は、つまり盗んだんじゃないのか?」
「はァ違うわよ。やァねェ。盗んだんじゃないわ。コントの最中だけ黙って拝借しているだけよ。コントが終わったらすぐに返せば誰にも気づかれないし、わかりっこないわ」
「いやいや、わかるか、わからないって言う問題じゃないだろう。だってこの自動小銃はマジで本物じゃないか!」
私も自動小銃を持ってみた。ずしりと重量感があった。20式5.56ミリ小銃だ。
「そりゃァそうよ。自衛隊のを黙って拝借して来たんだから」
ネムは楽しげに微笑んだ。
「だから黙って拝借して来るなァ。怖いヤツだなァ!」
「ほらァ、だってコントって細かいリアリティが大事でしょ。モデルガンじゃァ、ちょっとリアリティが足りないじゃん。ちゃんと弾を込めれば発射できるわ!」
ネムは一端のことを言った。
「いやいや、リアリティって。じゃァ機長の衣裳がビキニの水着なんか、あり得ないだろう。全然リアリティがないじゃん」
「だってしょうがないでしょ。ド変態の機長の設定なんだから!」
ネムは衣裳に関しては譲ろうとしない。
「いやいや、どんな設定だよ。ド変態の機長って?」
大丈夫なのか。このコントは。
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