43人が本棚に入れています
本棚に追加
アイリーンがエマの墓石の前で泣き崩れていると、背中が不意に暖かくなった。
振り返ると、レックスがマントをかけてくれていた。
「悲しみで、身体が凍えてしまうぞ。エマもそれは望むまい」
そう言って、優しくアイリーンの肩を撫でた。
レックスは、アイリーンが心配で様子を見に来たのだった。
彼は、アイリーンの横の草地に尻を付けると、
「ここは、妖精の住む丘だそうだ。その麓で眠る彼らは、妖精の国に行けるらしい」
と言った。
アイリーンが黙っていると、
「あの奥の二つの大きな墓石、分かるか?」
とレックスが指さした。
顔を上げたアイリーンが頷くと、
「マーカスの二人の弟だ。1年前の戦争で死んだ…。私が殺したようなもんだ」
と、レックスは言った。
「え?」
アイリーンが驚きの声を上げると、
「私が不甲斐ないばかりに、多くの戦死者を出した…」
と、吐き出すようにレックスは呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!