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祠の周りは色とりどりの野の花が咲き乱れており、登ってきた道から祠の前方までは人が踏み固めたような小道が付いていた。
祠から離れたところでレックスはアイリーンを下ろすと、その手を引いて祠に誘った。
アイリーンは、吸い込まれるように祠の前にしゃがむと、正面の石板に指を這わせた。
「どうした?」とレックス。
「どうして、これが『妖精の祠』だと?」とアイリーン。
「昔からの伝承だ。ここで妖精を見たことがあるという話も聞く」
「そうですか…。これ、なんて書いてあるが、知っていますか?」
「いや、知らない。読めないしな…。もともとここの先住民が使う文字だったらしい」
「そうですか…」
何か言いたげなアイリーンだったが、石でできた祠の周りを丹念に見ていた。
「いったい、どうしたんだ?」
アイリーンに野の花を見せようと登ってきたのに、アイリーンは祠を熱心に見ていた。
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