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「どうか、不安な心は人々にお見せになりませんように」
その言葉にレックスは、勢いよく振り返ると
「そんなに分かるか?」
と訊いた。
「分かりやすいですよ」とアイリーン。
「…」
レックスが黙り込んでしまうと、アイリーンは優しくレックスを見つめた。
その目と合ったレックスは、
「あなたには、隠し事などできそうもない」
と笑って言った。
アイリーンが困った顔をしていると、
「それは良い意味でだ。あなたを娶る男は、世界一の果報者だよ」
とレックスは付け加えた。
「それはまた…。過大評価というものです」
「そんなことはない。あなたの本当の姿が知れ渡ったなら、争奪戦がおこるだろう」
と言ったレックスは、今の戦いもまたそうだと思った。
レックスは、国を守るためにひたすら進んできたと思っていたが、彼の心を支配している不安は、戦いの結果、アイリーンを手放す未来が来ることだった。
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