盗品は…、花嫁

２６ 晩餐

「…そうでしたわね」　
　アイリーンは、ジェーンもグラディスもドーラまでもがいなくなった事件を思い返した。

「それで、ガダスの皆さんを晩餐でもてなそうにも、この現状ではとても難しい。そこで、厚かましいお願いなんだが、今回の晩餐だけ、あなたに助けてもらうことはできるだろうか？」
　アイリーンは、レックスが本当に苦しい思いで申し出てくれたことが分かった。

「…分かりました。大したことはできませんが、私でお手伝いできることはいたしましょう」
と、アイリーンは申し出を受けた。
　彼が城主の責任を果たそうとする気持ちに応えたかった。

　それからのアイリーンは、これまでの人生の中で一番忙しく、一番溌剌とした数日を過ごした。
　ハナたちに助けてもらって台所の設備や食材の在庫を把握すると、調理人たちと話合い、試作品を作るとともにノエルと食器やカトラリーを準備して、テレンスの到着を待った。