26 晩餐

5/6
前へ
/148ページ
次へ
 レックスは続けた。 「貴公は、娘を攫った罪人として私を断罪する資格があるのにそれをしないどころか、何か道具を預けたかのような話ぶり…。どこまでが貴公の計算なのか、種明かしをしていただきたいものです」  一気にそう言うと、レックスは杯をあおった。  テレンスは、その様子をじっと見ている。  レックスは、見られていることを承知で、それを無視して賑やかな会場に目を向けた。  アイリーンは、最初はテレンスの隣に座っていたが、料理や飲み物の差配のため席を立ってしまっている。今は、広間と台所の連絡通路のところに立って、使用人に指示を出しているのが見えた。 「本当に知りたいかい?」  テレンスは、静かに尋ねると、レックスは、 「試されたのでしょう?私のことも、王女のことも。そう思いたくないですが…」 と、素っ気なく答えた。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加