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「ふむ。だとしたら、どうするのかね?」とテレンス。
「そうではないという答えが欲しかったので、今は、少々動揺しております」
レックスは、視線をテレンスに戻して、テレンスの眼差しを受け止めて答えた。
「正直者だなぁ、君は」
テレンスも杯をあおった。
「私はいいんですよ。ただ王女を、アイリーンを試すようなことはお止めください。彼女は、あれほどまでに賢いのに、どこまでも控えめです。そして、どこまでも自分の責務を果たそうとする。試さなくても、彼女の素晴らしさは一目瞭然です」
と言うと、テレンスを見つめた。
「うちの娘は素晴らしいだろう?」
とテレンスは言うと、にやりと笑って「明日、連れて帰るつもりだ」と付け加えた。
その言葉を聞いてレックスは何かを言おうとして、ためらっている。
「アイリーンが噂と違うという話も、ちらほら広まりつつあるからね。ガダスに帰るといろいろ縁談も持ち込まれるだろう」
とテレンスは、レックスから目を逸らして会場を見た。
その視線の先には、アイリーンが甲斐甲斐しく働いている。その明るい表情を見て、テレンスが内心どれほど喜んでいるが、目の前のレックスさえも気づくことはなかった。
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