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数歩アイリーンに近づいたとき、彼は自分の負い目を思い出し、アイリーンを抱きしめそうになった自分を制止した。
レックスの胸の内には、自分の城でアイリーンを危険にさらし、大切な人を失わせてしまったという負い目があった。
こんな自分が、アイリーンに愛を乞うなど、厚かましいと思うのだ。
その思いが、アイリーンの瞳から彼の目を逸らさせた。
「私は、あなたに『特別』と思ってもらえるような男ではない」
彼はそう言うと、再びアイリーンに背を向け歩き出した。
アイリーンは、一瞬、レックスが何を言ったのか分からなかった。
ただ、自分から遠ざかる彼の後ろ姿から、自分が彼に拒絶されたと知った。
(ここも私の居場所ではなかった…)
これからもっとこの国を好きになりそうな予感があったのに。
もうここに居てはいけないと言われてしまったのだ。
アイリーンは、自分は彼にとって多少なりとも役立つ存在だと思っていたが、彼から求められていないという思いは、アイリーンを傷つけた。
涙で歪む景色を見ながら、アイリーンは黙ってレックスの背に従って歩いた。
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