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その言葉を聞いて、レックスは目を剥いた。
「まさか、今日の予定を知らせていたんですか?」
「ああ。一応ね。なんせ手を結んだ相手だから」
テレンスは、そう言い残すとさっさと馬車に乗った。
アイリーンは、馬車に揺られながら、不本意な自分の人生を呪っていた。
駒のように他国に嫁がされそうになったり、初めて心が動いた男性からは拒絶されたり、残りたいと願った土地に残ることができなかったり。
どうしてこんな人生なのか、誰かに説明してもらいたかった。
少しずつイサラス城から離れていくにつれ、寂しさが募り、心が凍えていくようだった。
そのとき、急に馬車が止まった。
アイリーンは休憩には早いと思いながら、窓の外を見た。
外で騒めきが起こったと思ったら、馬車の扉が急に開いた。
そこに立っていたのは、赤銅色の髪が逆巻くように乱れているレックスだった。
彼の呼吸もまた、ぜいぜいと乱れている。
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