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「お父様…」
と、アイリーンは感無量の思いで父を見つめた。
「ご先祖の導きだ」
そう言ったテレンスの言葉にアイリーンは、全てを悟った。
テレンスが、こうなる予知夢を見ていたということを。
そして、アイリーンは全体像の最後のピースが埋まった気がした。
「もう!そういうことは早く言ってください!」
「私もハラハラしたぞ。レックス殿!奪うほどに望むのなら、決してそばから離してはならぬよ!アイリーンは、どこででも生きていける女だからな!」
テレンスが、レックスを見据えて言うと、
「もちろんだ!生涯、手放さぬ!」
レックスは吠えるように叫ぶと、アイリーンを抱えて馬に乗り、あっという間に街道を駆けていった。
アイリーンは今起こったことを信じられないと思いながらも、レックスがアイリーンの手をとった確かな熱さを思い返した。
(私は、ガダスに帰らなくていい…)
そう思うと、全身の力が抜けていった。
その一行から離れて、レックス単騎になったとき、彼は馬の速度を落とした。
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