28 強奪

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「お父様…」 と、アイリーンは感無量の思いで父を見つめた。 「ご先祖の導きだ」  そう言ったテレンスの言葉にアイリーンは、全てを悟った。  テレンスが、こうなる予知夢を見ていたということを。  そして、アイリーンは全体像の最後のピースが埋まった気がした。 「もう!そういうことは早く言ってください!」 「私もハラハラしたぞ。レックス殿!奪うほどに望むのなら、決してそばから離してはならぬよ!アイリーンは、どこででも生きていける女だからな!」  テレンスが、レックスを見据えて言うと、 「もちろんだ!生涯、手放さぬ!」  レックスは吠えるように叫ぶと、アイリーンを抱えて馬に乗り、あっという間に街道を駆けていった。  アイリーンは今起こったことを信じられないと思いながらも、レックスがアイリーンの手をとった確かな熱さを思い返した。 (私は、ガダスに帰らなくていい…)  そう思うと、全身の力が抜けていった。  その一行から離れて、レックス単騎になったとき、彼は馬の速度を落とした。
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