42人が本棚に入れています
本棚に追加
29 エピローグ
レックスがアイリーンを連れ去ったとき、将軍の一人が勢い込んで馬車を覗き、
「追いますか?!」
と叫んだ。
「放っておけ」
と言うと、テレンスは、馬車の座席にもたれかかった。
テレンスの意図が分からない将軍は、レックスとアイリーンが去っていた方向とテレンスの顔を交互に見ている。
彼の困った様子にテレンスは、
「いいんだ。あれでいい。追わなくっていいんだ。彼がイサラスの王であるのは知っているだろう」
と付け加えた。そして、
「我々は、このままガダスに向かう」
と言った。
将軍は、「かしこまりました」と言うと、すぐに馬車から頭を引っ込めた。
馬車の扉が外から閉じられ、一行が動き出したとき、テレンスの肩が揺れた。
はじめは小さく揺れていたものが次第に大きく揺れ、テレンスはこらえきれないといった様子で、笑い声を上げた。
「あははは。アイリーンのあの顔といったら」
最初のコメントを投稿しよう!