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そう言うと、テレンスは「はぁ」と小さく息を吐いた。
その顔は、王の顔ではなく父親の顔だった。
(幼いころから物覚えがよく、観察眼もあり、道理をよく理解した子だった…)
したがって、ガダスでの自分の扱いが王女ではなかったということも分かっていただろうと、テレンスは思っている。
それでも、アイリーンを厳しく教え込まねばならなかった。
小国の王の伴侶になるなら、生き馬の目を抜くようなこの情勢で、生き抜く知恵が必要だった。予知夢だけでは足りないのだ。
(ガダスで、外の風に当てずに城に閉じ込めておけたらどれ程良かったか)
父としてテレンスは、娘から誤解をされてもなお厳しくしなければいけなかったことを、少し後悔していたが、レックスが彼女を選び、アイリーンが彼を選んだという結果におおいに満足していた。
「はぁぁぁ」
今度は、大きくため息をついた。
「寂しくなるなぁ」
と、本音が声に出た。
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