29 エピローグ

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「アリンの子孫であるガダス王よ。よくぞ、その真情に従った」  そう言葉を残すと、その姿は消えた。  爽やかな花の香だけが、辺りを漂っていた。 「なんてことだ…」 テレンスは、一気に身体が脱力するのを感じた。  伝説の存在を目の当たりにしたのだという実感が、遅れて湧いてきた。  ほんの僅かな会遇だったが、テレンスは自分が、人智を超越したものの手の平で転がされていたことを知った。 「自分が転がしているつもりが、転がされていたとは…」  テレンスは畏怖とともに、見守られている悦びを噛みしめて空を仰いだ。  自分の能力ゆえに孤独の道を歩んでいると思っていたが、実はそうではなかった。  テレンスは、アイリーンにこのことをどう伝えようかと考えると、また未来が楽しくなってきたのだった。 (了)
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