42人が本棚に入れています
本棚に追加
「アリンの子孫であるガダス王よ。よくぞ、その真情に従った」
そう言葉を残すと、その姿は消えた。
爽やかな花の香だけが、辺りを漂っていた。
「なんてことだ…」
テレンスは、一気に身体が脱力するのを感じた。
伝説の存在を目の当たりにしたのだという実感が、遅れて湧いてきた。
ほんの僅かな会遇だったが、テレンスは自分が、人智を超越したものの手の平で転がされていたことを知った。
「自分が転がしているつもりが、転がされていたとは…」
テレンスは畏怖とともに、見守られている悦びを噛みしめて空を仰いだ。
自分の能力ゆえに孤独の道を歩んでいると思っていたが、実はそうではなかった。
テレンスは、アイリーンにこのことをどう伝えようかと考えると、また未来が楽しくなってきたのだった。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!