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脱出に成功した私は帰路に就いていた。絶好のタイミングで電話をかけてくれた母に謝辞を述べた。
「母さん、電話してくれてありがとう」
〈ん? どうしたんだい?〉
「久しぶりに声が聞けてよかった」
〈変なこと言うねぇ? 仕事忙しいのはわかるけど、たまには家に帰ってきなさいよ!〉
私は涙を拭いながら電話を切った。それから、その足でケータイショップに行き、機種変更と共に携帯電話番号の変更も行った。勿論、城咲と極めて短い縁を切るためだ。
後日、高校時代の友人に同窓会の件を尋ねたのだが、そんな話は存在しなかった。
城咲が私と接触を取るために嘘を吐いていたと言うことになる。
信仰のためなら手段を選ばない城咲に対して、心からの恐怖を覚えてしまった。占いを自分の信仰の為に使っているのも実に性質が悪い。
健全な占い師からすれば実に迷惑な存在だろう。
久しぶりに電話に出たせいで、嫌な思いをした。でも、久しぶりに電話に出たおかげで、嬉しくもなれた。望郷の念が沸いてくるというものである。
私は久しぶりに実家に電話をかけ、それを報告することにした。
おわり
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