2人が本棚に入れています
本棚に追加
試合終了後の球場近くのファミレスも試合終わりの客の喧騒で落ち着かないとは思う。
だが、何か軽いものでも食べながら連絡先を渡すのもいいだろう。
私は城咲と共に球場近くのファミレスに行くことにした。
ファミレスの客入りは疎らだった。最下位争いの試合後ともなればこんなものか。
私と城咲は最奥の広い席に向かい合うように座った。注文はドリンクバーにポテトと軽いもの。ポテトが届けられたところで、城咲は席から立ち上がった。
「トイレ行ってくる」
「おう」
数分後、城咲が席に戻ってきた。その顔は野球を観ていた時とは違って神妙なものだった。
「あのさぁ、真剣な話をしたいんだけど聞いてくれるかな?」
「もう俺の高校の時の友人の番号準備してるんだけど?」
「今さぁ、この国って危ないよね? 海外も戦争ばっかりでいつ巻き込まれるか分からないし、謎の病原体も世界に蔓延してるし、もう大変だよね」
いきなり何を言っているんだ? 社会に対する不満はわかるが、こう言う愚痴は仲のいい気心の知れた友人と居酒屋でやってくれよ。私は顔を歪めてしまった。
「でさぁ? 潮田くんもさっき手相見たんだけど、色々と上手くいってないよね? 主に人生回りが」
人生が上手くいっていないのは否定出来ない、他人に不憫に見られても仕方ないものなのは認めざるを得ない。
だが、それを面と向かって言われると腹が立つもの。私は怪訝な目で睨みつけてしまった。
だが、城咲は引かない。むしろ、目を血走らせながらもキラキラと光らせていた。
気持ち悪い目とはこういうもののことを言うのだろう。
「こういうさ、上手くいってない人生も『祈りパワー』で救われるんだよ! 我らのお父様は全人類のためにお祈りになって送っているんだよ! 俺達信徒以外の皆はそれを信じてないから不幸になるんだよ!」
そういうことだったか。私は城咲の目的に気が付いてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!