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「うちの教団の素晴らしさはこれでわかったと思うんだ。今度、集会やるからさ? 参加してよ。それでちょっと名前書いて欲しいんだけど」 そのペラ紙を軽く見る限りでは「入信届」の文字は見当たらない。ただ、こんな怪しい宗教団体にくれてやる個人情報はない。住所が悪用される予感しかしない。 それと、信仰は金であることしかわからないよ? 君の説明。  トイレに行くと誤魔化して逃げるか? ここのファミレスのトイレは店の最奥にある、今座っている席のすぐ近くだ。トイレのドアの斜向いにあるため、コッソリと逃げることは出来ない。これを想定して最奥の席を選んだと言うなら相当の策士である。 ここはキッチリとNOだ。 「うち、地元の寺の檀家なもんでさ。勝手に抜けれんのよ」 城咲は引かない。先程までの熱弁でヒートアップしているのか、顔を真っ赤にしていた。 「寺も悪魔なんだよ! だからうちの教団の『祈りパワー』で浄化しないと!」 話が通じない。私が苦い顔をしていると、隣の男が名刺を出してきた。 「ああ、私こういうものです」 男の役職はかなり名のある会社の重役だった。成程、地位のある人間も信仰していると教えて信用を得ようと言う腹心算(はらづもり)か。善意でやっているのかもしれないが、此方からすれば奸計にしか思えないよ! いい加減にして欲しい。  店員を呼び出して「宗教勧誘は迷惑行為ではないのですか」と、退場させてやろうと考えた。この二人はそれすらも想定しているのか、呼び出しボタンをどこかに隠してしまっていた。ならば、こちらに渡して貰うだけだ。 「追加注文したいんだけど、ボタンは?」 「ああ、それよりさ。お父様なんだけど歴史の教科書に出てくる偉人に転生してたこともあってさ、この国を守ってくださったんだよ? 凄いでしょ?」 話のキャッチボールすらも出来ないのか、こいつらは!? 兎に角、自分の言いたいことだけを言って強引にでも集会に行く約束を取り付けるか、入信させたいだけだ。 ここから出るには世界で一番嫌な二者択一のうちのどちらかを選ばざるを得ないのか?
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