椎名くんは焦らない

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 別に、毎日会えなかったわけじゃない。  見慣れているはずの椎名くん。  だけど、今夜の椎名くんはどこか違う人みたいに見えた。 「椎名くん、ちょっと見ない間に足長くなった?」 「測ってないから何とも言えないけど、多分長くなってないよ」 「じゃあさ、鼻の高さ変えた?」 「整形? してないよ」 「えー。じゃ、どこだろう……体脂肪率変わった?」 「それ、見て分かるか?」  肉まんを食べながら歩いて帰る。いつもと同じ、椎名くんは右側で、私が左。 「藤川こそ、少し痩せた?」 「いや。逆に太った」 「ウソ。何キロ?」 「500グラム」 「誤差の範囲じゃん。女子って言うよなー、そういうやつ」  他愛のない話もなんだか懐かしい。  まるで一ヶ月くらい会ってなかったみたい。  私たちがこんなに真面目に受験生やるなんて、出会った頃は想像もつかなかったよ。  教室でずっとくだらないこと話してさ。  友達の沢田くんのことをライバルだと言い張って、絶対友達だと認めなかったり、超能力が自分にあるかどうか試したり、流行遅れの人狼ゲームでゾンビになったり、付き合い始めても結局同じムードだったり。  あまりにも時間がありすぎて、くだらなく消化してたな。  だけど、そんな日々がすごく幸せだったんだなって思う。
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