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私は、大きく息をした。
7日目、夢から覚めた。
ただそれだけ――
裏口の鍵をかけ、本を胸に店の正面から入る。
定位置で居眠りする空太郎さんの膝には、体を丸めて眠るにゃんた。
鍵をカウンターの内側にそっと置き、にゃんたの背中を撫でる。
にゃんたは目を開け顔をブルブルと振って、空太郎さんの膝から飛び降り、その辺りを歩いた。
でも、もう二足で立つ事も、人間の言葉で私に話し掛ける事もなかった。
「お、実梨ちゃん、返却に来たのかい?」
「はい、ありがとうございました」
いつもなら空太郎さんと雑談して帰るのだけれど、今夜はそんな気にはなれなかった。
「もうお店閉めて、ちゃんと寝た方がいいですよ。今夜は寒いし風邪ひくといけないから。
じゃ、おやすみなさい」
私は店のドアへと向かう。
「実梨ちゃん、いい夢は見られたかい?」
私はハッとして目を見開き、空太郎さんを振り返る。
ああ、そうだ……
彼が私の7日間を知っている筈がない。
この店の本を読んだ後、いつも空太郎さんは、私にそう尋ねるのだった。
本の世界は、素敵な夢の世界。
だから、
「いい夢は見られたかい?」と――。
――了――
七日間の夢〜夢の続き
https://estar.jp/novels/26180627
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