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4 デートプラン
「……後で、ケーキを食べに行こう」
「……は?」
「その後は水族館で水槽に手を吸いつかせて魚と遊ぶんだ。スタッフに怒られたら退散して、別の場所で隠れてまたやる。そうしたら二人でカフェに行って慣れない珈琲に口をつけるんだ」
「何言ってるの!? 現実逃避なんてしてないで早く私を……」
「あの時話してた、デートプランの続きだよ」
もしかするとこの記憶すら嘘なのかしれない。
でも、嘘でも良かった。
五年間もサナギに会えなかった空白の期間に比べれば、そんな事は些末な問題だった。
「だからそれは全部嘘っぱちで……」
「寂しいから、そんな嘘をつくんだろう?」
「……違う」
「じゃあ、そんな顔するなよ」
機械は、サナギはまた泣き出した。本人も意図しない涙だったのか動揺して、故障したんだと頭を叩き続けている。本当に馬鹿だった。サナギも、僕も。
「君の事、誰が恨んでも大好きなんだ」
「……嘘つきの機械が好きなんて、馬鹿だよ」
「例え全部嘘でも、これから本当にするよ」
「これからなんて……」と力無く呟く彼女の手から力が抜けていく。拳銃を川に投げ捨てて優しく抱き締めた。白鳥が二匹、空へ飛んでいく姿が見えた。
「どうしよう。ミリム国から人間を全員逃がせたか自信が無いの。私の判断のせいで、人が死んでしまったのかもしれない」
やっと本音を零し懺悔する彼女の耳を塞いで警報の音を消した。
彼女の任務も葛藤も罪も罰も、全てがこれからの未来を縛る呪いになろうとも背負うと決めた。
いつかは向き合わないといけないけど、今だけは気休めでも良いから幸せになって欲しかった。だから、僕の頭の中にあった理想のデートプランを教えた。君が未来に希望を持てるように、確実に警報の音を消す為に。
警報が鳴った日。君と更地でデートした日。
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