1 警報

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1 警報

 今から五年前、ミリム国に警報が鳴った。  武装集団による革命が街を蹂躙し、多数の死傷者が出た。腐臭と延焼する建物の焦げる匂いが街を覆い、凄惨な有様を歴史の一ページに刻んだ。  僕はその時、学校の課外授業で街を出ていたから何とか助かる事が出来た。後から見せられた映像には、昔遊んだ公園の遊具が破壊された様や、行き場を失った人の苦痛に満ちた顔が映っていた。死体を映像で確認出来なかったのが奇跡だと言える程、生まれ育った街は跡形もなく破壊され尽くされていた。  国の三分の一が消失し、役目を果たさなくなった門を潜り抜ける害獣や隣国の盗賊が現れ始めた。街を守る警察も革命で著しく減少し、国は臨時の軍隊を組織し始めた。僕も学校を卒業した後、その軍隊の入団テストに合格し、参加する事になった。最初は瓦礫掃除や被害者の心身のケアなどあらゆる仕事を請け負った。国を守ろうなんて大層な考えは無かった。  ただ、軍隊に入った明確な動機はあった。  この革命の首謀者の娘は、僕の幼馴染だった。  革命とほぼ同時期に行方不明になってしまい、情報の一つもない。死んでしまった、なんて考えたくも無かった。無駄な足掻きかもしれないがどんな些細な情報でも手に入れたくて、軍人の道を選ぶ事にした。  軍隊に入って四年が経ち、完全復興とは行かなかったがこれ以上の費用はかけられないと臨時の軍隊は解散となった。一部の希望者には更なる入団テストを行い、選りすぐりの精鋭だけが正式な軍人となった。僕は補欠合格で、運も重なって何とか入団を許された。  二度目の警報が鳴ったのは、そこから更に一年後の話だった。
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