2 再会

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「どうした? 調子悪いのか?」 「……ああ、ケーキ食べ過ぎたからな」 「いつまで言ってんだよ……」  翌日、昼前から移動が始まった。  昨晩も全く眠れず、サナギとの会話を全神経を使って解読していた。  SOSを暗号として送っていたのでは無いか?  何か深刻な病気でも抱えていて自暴自棄になっているのではないか?  そもそも革命を起こせる兵力があるのか?  だが、いくら考えても違和感は無かったし、絶対に成功させるという意志すら感じた。魚に羽は絶対に生えないと僕達が常識として知っているように、サナギは計画の完遂を自分の中の常識として置いているようだった。  街を抜けて、国境沿いの川を下っていく。川の向こう側には森があって、夜になると害獣が出たり怪しい輩が湧き出てくる。それらを的確に処理していくのがこの地での任務だ。  ふと、今日の約束の場所にナカサを連れていく案を考えた。こいつは腕っ節も立つし、僕よりも戦果を挙げている。周りの奴らは話しかけても社交辞令しか返してこないが、ナカサだけは仲が良いと自信を持って言う事が出来る。  一方でサナギと接触させたくないという思いもある。単純に危険なのもあるし、ナカサに負担をかけたくない気持ちもあった。サナギが一人で来いと脅しをかけてきたのも理由の一つだ。 「馬鹿か僕は……」  そんな言い訳なんて考えるんじゃなかった。  本心はたった一つの至極シンプルな理由だけだ。  サナギに、他の男を会わせたくない。  こんな緊急事態にも関わらず、僕はサナギへの恋心を完全に払拭する事が出来ずにいた。拳銃を突きつけられて、革命なんて起こそうとする馬鹿そのものなのに、どうにかして助けたいなんて思っている。ナカサは優秀な奴だ。優秀だから、サナギの事を躊躇いなく殺そうとするだろう。それだけは避けたかった。  ヒーローになりたいなんて子供じみた思いは無い。ただ、どんな結末を迎えたとしてもサナギと一緒に居たい。五年間も人を心配させておいて、あんな別れ方はあんまりだ。せめて終わり方くらいはちゃんとしておきたかった。
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