3 答え合わせ

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 サナギは嘘をつく人間だ。昔から間違った豆知識を披露して、真に受けた僕が友達にそれを教えて赤っ恥を掻くのがお約束になっていて。いや、その友達は機械だから意味無いのか。頭が本格的にぐちゃぐちゃになってきた。何も考えたくない。  それでも脳は必死に考え続ける。  そして気付く。最悪の可能性を。 「……僕は、機械なのか?」 「違うよ。さっき言ったでしょ。人間は居ないって。人間は少数だけど、確かに居るよ。逃がすの大変だったんだからね」  僕は人間。機械じゃない。サナギを信じるしかないこの現状が心底憎い。確固たる証拠が欲しい。それに、根本的な謎の解決はしていない。 「じゃあ何でわざわざ人に擬態させて、機械を大量に作ってたんだよ。意味が分からない」 「……始まりは、一人の博士の研究からだったの」  サナギは僕に拳銃を下ろすように指示を出し、渋々ポケットにしまった。代わりにサナギは拳銃を川に投げ捨て、武器の不所持をアピールした。 「博士は人の心を持ち、人と同じ思考をする機械を開発したの。これは画期的な発明で、博士は研究の成功を祝して、盛大なパーティーを開催した。それが、過ちとも気付かずに」 「……過ち?」 「そのパーティーの中には国の上層部も参加していたの。その実用性に目をつけられた結果、研究成果は国に奪われ、博士と機械は隣国に引き渡されてしまった。兵器開発の邪魔をされないように。博士は死ぬまでその機械を作ったのを後悔していたよ」  爆撃音がまだ続いている。  警報はまだ鳴り響いている。  サナギは空を見上げて、話を続ける。 「当時のミリム国は国土が狭くて、兵器を隠せる場所が無かったの。だから、博士の研究成果を転用して、人に擬態した兵器を開発した。常時は人と変わらぬ生活を送り、スイッチが入るとミリム国の為に働く兵器になるの。いつしか人間よりも機械の方が多くなって、周りの国からは秘密裏にこう言われた。『ミリム国は国では無い。国の形をした工場だ』ってね」 「……武力の膨張を恐れた国々は、ミリム国から機械を取り上げようとした。それが革命って事なのか?」 「そうだね。大体そんな認識で合ってるよ。一回目は想定以上の力で負けてしまったから、二回目は念には念を入れて罪の無い人間を逃がし、手の届かない空中から爆撃をする事にしたの」  爆撃音が遂に止まった。  警報はまだ鳴り響いている。  到底信じられはしないが、疑問は大方解決した。だが、未だ嫌な予感が全身を覆っている。  最初の機械を作った博士の内情を知り、革命の詳細を説明し、今に至るまで歴史を話し続ける。 「サナギ、まさか君は」 「……ご明察。私が、博士が作った最初の機械だよ」
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