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肌の内側、無機質な機械の部分が顕れた。
「本当は君に会う気も無かったの。でも軍人になった君が大人しく指示に従って逃げる保証も無かったからさ。こんな芝居しちゃった」
肌の外側、感情を押し殺した機械が立っている。もう何を言っても届いてくれないと感じてしまうくらい、冷たくて恐ろしい伽藍堂の瞳をしていた。
「お母さんもお父さんも本当はいないよ。上官の二人から任務を引き継いだだけだからね」
「じゃあ、一緒に過ごしたあの日々は」
「……馬鹿だね! 全部嘘に決まってるんじゃん! 記憶チップを君に埋め込んで、仮初の記憶を植え付けただけだよ。私とは何の関係もない」
サナギは淡々と近付き、僕のポケットから拳銃を取り出した。僕の右手を包み込み、それを持たせる。そのままサナギの胸元へ、人間の部位で言う所の心臓へ標準を合わせる。
「なんか、もう疲れちゃったなあ」
「何、言ってる」
「殺して。本当は人間なんか逃がしてなくて、今も焼かれているかもしれない。大義名分はある。同胞の為に、軍人の命を全うすればいい」
サナギは犯罪者で、革命者で、機械だった。
僕が守ってきた市民、街、国を滅ぼした張本人。
ここで逃がせば、軍人の名折れになる。
それにサナギも殺されたがっている。介錯をしてやるのが、せめてもの救いなのでは無いのか?
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