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秋も終わりの見えた昼下がり。
俺は、営業先から、別の営業先へ徒歩で向かっていた。
日差しは暖かいが、空気は冷たい。
コートを着ていても寒かった。
近道で使う公園の入り口付近で、予告も無く、君の姿を見つけた。
思わず足を止める。
胸が高鳴った。
最後に君を見たのは、いつだったか。
もう何年も見ていなかった気がする。
久しぶりに、その姿を見て
君と過ごしたあの甘い日々。
肌を温めたあの日々。
幸せだった記憶が蘇り、顔がにやける。
ああ。あの頃と、君はちっとも変っていない。
君を見なくなってから半年くらいだから、当たり前だけど。
でも、再会を待ち焦がれてた。
君が恋しかったんだ。
最近、急に寒くなったからね。
ぽち。
ガタン!
自動販売機から、君を取り出す。
愛しの君。おしるこ缶。
外周りで冷えた両手で包み込む。
「はあ~あったかぁ」
フタを開ける。顔にかかる熱。ちょっとふーふーして、一口飲む。温かさが沁みる。甘みで顔がとろける。舌に触れる粒の感触も嬉しい。
「はあっ」
ほっとして、吐息が漏れた。
もう一度、君を両手で抱きしめる。
ああ、俺のおしるこ缶。
この冬も一緒に甘い日々を過ごそう。
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